研究概要 |
2種類の細胞接着装置(細胞間接着装置および細胞-細胞外基質間接着装置)と細胞骨格の管状構造形成に果たす役割を調べた。Adherens junctionの形成過程において、細胞の辺縁の一部が隣接する細胞の辺縁部に乗り上げ、基底面とほぼ平行な接着面を形成する。この接着面には、E-cadherinを中心とする微少クラスターが複数まず形成される。E-cadherin微少クラスターの大きさはほぼ一定で、半径が約200nmのほぼ円形に近い形状であった。E-cadherin微少クラスターが直線状に連なったものも存在していた。この直線状の存在様式は、カルシウムスイッチから時間が経つに従って増加する傾向を示した。また、細胞密度の上昇とも関係していた。E-cadherin微少クラスターの形成と維持にはアクチン線維が密接に関わっている。すなわち、アクチン重合阻害剤であるcytochalasin Dまたは安定化剤であるjasplakinolideにより大きく影響を受けた。E-cadherin微少クラスターにはα-catenin, β-catenin, γ-catenin,およびp120ctnも共存していた。続いて、細胞-細胞外基質間接着構造の形成・維持のメカニズムについて、細胞外力学環境との関連で調べた。硬さを変えることの出来る「足場」として、ポリアクリルアミドゲルを用いた。硬い「足場」の上で細胞を培養すると、細胞は大きく伸展し、大きなfocal adhesionと太いストレスファイバーを形成し、さらに、ストレスファイバー上にはミオシンが存在していた。一方、「足場」が軟らかくなるにつれて、細胞の底面積は減少し、focal adhesionおよびストレスファイバーも明瞭な構造を形成しなくなった。
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