研究概要 |
肝線維化の形成過程において,PDGFRを代表とするRTKやTGFβRシグナルによる肝星細胞の活性化が重要な鍵を握っていることが明らかにされている。 Discoidin Domain Receptor 2 (DDR2),RTKの一つで,そのligandがコラーゲンであることが最近報告されたが,今回,そのシグナル伝達ならびにその機能について詳細に解析した。まず,肝星細胞を用いた,抗DDR2抗体による免疫沈降後のウエスタンブロットにより,DDR2は,Srcと結合することを明らかにすることができた。DDR2と結合するその他の分子を同定するため,Src kinaseを発現させたModified Yeast Two Hybridを行ったところ,Shc adaptor proteinが,DDR2と結合した。DDR2ノックアウトマウスから分離した細胞を用い,これにDDR2遺伝子を戻してやると,wild type DDR2がコラーゲン刺激によりリン酸化され,Shcと結合することが明らかになった。さらに,MMP-2の発現がSrc kinaseを含むDDR2シグナルによって誘導されることも明らかになった。そこで,Src kinaseを抑制するために,Dominant Negative SrcをCre-loxPを備えたアデノウイルスベクターに組み込み,コラーゲンプロモーターによりCre recombinaseを発現するアデノウイルスベクターと共に,培養肝星細胞やチオアセトアミド投与障害肝モデルのラットに共感染させると肝星細胞の増殖は抑制され,このとき,同時にDDR2のリン酸化も抑制されており,障害肝モデルでの線維化も組織学的に軽減した。以上,DDR2は,Src kinaseとの相互作用により,そのシグナル伝達が制御されることを明らかにした。
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