胚発生において心臓の弁や中隔は心内膜床から形成される。この心内膜床は胚心臓の内皮細胞が間葉細胞に形質転換し形成される。この内皮-間葉形質転換は心筋から分泌される未知の誘導因子により誘導される。我々はこの未知の誘導因子に対するモノクローナル抗体H8D8を作製し、ニワトリ胚心臓cDNAライブラリーより遺伝子クローニングを行っている。【研究実績】(1)クローニングに用いる免疫組織化学法の確立、(2)遺伝子クローニング【方法】(1)クローニングに先立ち、スクリーニングに使用する免疫組織化学の固定法について、未固定、エタノール固定、4%パラホルムアルデヒド固定胚から作製した切片について検討をおこなった。また二次抗体について、Horse Radish Peroxidase(HRP)標識抗体、FITC標識抗体について検討した。(2)COS7細胞にニワトリ胚心臓cDNAライブラリーのプラスミドを導入し、タンパク質を発現させた後、H8D8抗体を用いた免疫組織化学によりスクリーニングを行った。【結果】(1)免疫組織化学の固定法はエタノールを用い、H8D8抗体の検出にはHRP標識抗体を用いるのが適当であることが判明した。また以上の方法は遺伝子導入を行っていないCOS細胞で偽陽性反応が起らないことを確認した。(2)ニワトリ胚心臓cDNAライブラリーを150クローンごとの小グループに分け、それぞれのプールからDNAを抽出した。次にこのグループごとにCOS7細胞に遺伝子導入した。遺伝子導入した48時間後、免疫組織化学法でH8D8蛋白の発現をスクリーニングした。これまでに約2000クローンのスクリーニングを行ったが、陽性プールは得られていない。【今後の展開】上記方法によるクローニングは継続して行い。さらにクローニング法の効率化、あるいは抗体を用いたH8D8蛋白の精製についても検討したい。
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