研究概要 |
メルケル細胞-神経複合体(メルケル終末)におけるメルケル細胞の役割を解明する目的で、我々が先に解明した当該終末におけるG蛋白質の分布パターンをベースとして特異的受容体同定のための免疫組織化学的スクリーニングを行なった。材料にはラットの口唇周囲に分布する洞毛を使用した。メルケル細胞に特異的分布が明らかにされたG蛋白のうち、Gq蛋白と共役する可能性のあるものとして第1群代謝型グルタミン酸受容体(mGluR)およびY型ATP受容体群(P2Y)に属する各種受容体を、Go蛋白に共役する可能性のあるものとしてセロトニン受容体(SR)を想定し、これらの受容体の各種サブタイプに対する市販抗体をもちいて免疫組織化学を施行した。その結果、メルケル細胞にはmGluR5、P2Y2受容体,SRIAおよびSRIBの陽性反応が認められた。次にmGluR5やP2Y2受容体がリガンドと結合した際にGq蛋白から遊離されるαサブユニットによって活性化されるフォスホリパーゼCβ(PLC-β)のアイソザイムを特定するため、4種類のアイソザイムに対する市販抗体をもちいて免疫組織化学を施行した。その結果、メルケル細胞にはPLC-β1が局在することが示唆された。一方、メルケル細胞と接続する知覚神経終末にはPLC-β4の陽性反応が認められたが、この反応に関わる受容体およびG蛋白の同定は今後の検討課題として残された。次に、PLC-β1がメルケル細胞の細胞内カルシウムイオンの動員により顆粒分泌促進に働く可能性を検討するため、イノシトール3リン酸(IP3)受容体(IP3R)の存在を免疫組織化学的に調べた。その結果、メルケル細胞にはIP3RIとIP3RIIの2種類のサブタイプが発現している可能性が示唆された。セロトニンレセプターを介するシグナル伝達系につても次年度の検討課題としたい。
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