研究概要 |
妊娠13日から生後10日のICRマウスを用いた.光顕のTUNEL染色のためには,パラフォルムアルデヒド固定後,パラフィンに包埋し,3μmの連続切片を作成した.'Apoptosis in situ Detection Kit'(和光純薬社製)により,核DNAの断片化をDABで可視化し光顕で観察した.カルノフスキー液で固定後,エポン包埋した肝臓からは,はじめ準超薄切片を作成し,トルイジンブルー染色切片で光顕観察後,超薄切片を作成し,電顕観察をおこなった.; マウス胚子肝臓における造血は,胎生14日ピークとし,それ以後は次第に減衰する造血退縮期となり,ほぼ生後1週間で造血細胞は肝臓から消失する.胎生後期から生後早期の肝臓で肝細胞間または拡張した類洞周囲腔内に,孤立性の造血巣を形成し,造血巣は赤芽球,果粒球,リンパ球の造血系細胞のほかに少数のマクロファージや線維細胞を含む.造血退縮期の肝臓には,TUNEL陽性細胞が含まれる.陽性反応は,造血巣内の造血系細胞やマクロファージのほかに,肝細胞にも観察され,新生子期肝臓にはプログラム細胞死に陥る肝細胞の存在することが明らかになった. パラフィン切片の光顕観察では確認できないが,エポン切片による光顕ならびに電顕観察で,細胞死にいたる肝細胞は,異なった二つのプロセス<タイプIとタイプII>を観察することが出来た.タイプIは細胞死の最初の兆候が細胞質に現れる.細胞質に含まれる細胞小器官の中で,粗面小胞体が拡張するのが特徴である.角膜周囲腔も拡張する.高度に球状に拡張した小胞体はサイズが数μmに達し,細胞質全体を占め,それによって肝細胞は泡状を呈する.核は変形して消失し,小型化した細胞断片は隣接細胞との結合を失って,類洞周囲腔内へと移動する.一方,タイプII型は核に細胞死の最初の兆候が現れる.核染色質が核膜に沿って強度に凝集し,細胞質も退縮する.タイプIは細胞質の変化を主体とするプログラム細胞死で,タイプIIは核の変化を初発とする古典的なアポトーシスによるプログラム細胞死で,新生子期の肝臓では,タイプIが極めて多いのが,特徴である.
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