1.ヒトの卵巣において 昨年度には、ヒト卵巣のパラフィン切片・H-E染色標本において、閉鎖したグラーフ卵胞で核凝縮をおこした果粒層細胞を処理する大型で丸い細胞を認めた。今年度は、免疫組織化学的手法により、その細胞の同定を試みた。用いた抗体はKP1(CD68の一クローン)-ヒトのマクロファージに対するモノクローナル抗体-である。 閉鎖卵胞内にあらわれた大型の細胞は、この抗体に粗大果粒状の陽性反応をその細胞質に示した。H-E染色標本における形態的特徴とあわせて、それはマクロファージであると考えられた。ヒトの卵巣でも、死滅した果粒層細胞の処理にマクロファージが関与することが、明らかとなった。 2.モルモットの卵巣において さきにわれわれは、凍結切片の免疫組織化学ないしは透過電顕観察により、モルモットの卵胞内にあらわれるマクロファージの存在を報告した。今年度は、パラフィン包埋された材料よりの切片にH-E染色および免疫染色を施すことにより、さらに検索をすすめた。用いた抗体はMAC387である。これはKP1と同様にヒトのマクロファージに対するモノクローナル抗体であるが、モルモットにも交差反応を有する。 (1)閉鎖卵胞:H-E染色標本にて、核凝縮をおこした果粒層細胞を、それらに混在する大型で丸い細胞がさかんにたべこんでいる像が観察された。この大型の細胞はMAC387に陽性を示した。(2)発育中の卵胞:果粒層細胞に細胞死の徴候の認められない発育中(閉鎖していない)と考えられるグラーフ卵胞の内にも、ごく少数(一切片でせいぜい2-3個)の大型で丸い細胞が、H-E染色標本にて観察された。MAC387にそれは陽性であった。 パラフィン包埋切片によっても、閉鎖卵胞内および発育中の卵胞内にマクロファージが存在することが、明らかとなった。
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