研究課題
卵胞の動態、すなわち発育や閉鎖に対して、果粒層細胞とマクロファージとがいかなる役割を果たすのかを解明することが本研究の主たる目的であった。1、卵胞の閉鎖過程でアポトーシスに陥った果粒層細胞の処理機構さきにわれわれが報告したモルモットとならんで、本研究ではヒトにおいてもその卵巣の組織標本(H-E染色)で閉鎖したグラーフ卵胞内に大型でまるい細胞を認めた。そしてKP1による免疫組織化学染色によりそれがマクロファージであることを示した。アポトーシスに陥った多数の果粒層細胞をこのマクロファージがたべこみ処理をするとのヒトにおける本所見につき、2004年8月京都で開催された第16回国際解剖学会において発表し、現在論文執筆中である。2、マクロファージの卵胞内への侵入様式本研究においてわれわれはモルモットの卵巣で、閉鎖卵胞のみならず発育中の卵胞でもその卵胞洞にマクロファージが出現することを、H-E染色、免疫染色(MAC387)、および透過電顕観察によって明らかにした。しかしながら、単球/マクロファージが卵胞周囲の基底膜を通って卵胞内に侵入する像は、いまだとらえられてはいない。一方、最近われわれはヒトの卵巣において、発育中のグラーフ卵胞の果粒層細胞間に毛細血管とみられる構造を偶然発見した。その管状構造の内面は内皮細胞のマーカーであるCD31免疫染色に陽性を呈する扁平な細胞でおおわれ、さらに透過電顕観察にてそれは内皮細胞により裏うちされた毛細血管であることを示した。血管支配はないとされている卵胞果粒層における血管新生を示唆する所見であるが、マクロファージはこの毛細血管壁から遊出して卵胞内に侵入するとの新たな機序も考えられ、さらなる解析が待たれる。
すべて 2004
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Anatomical Science International 79,Suppl.
ページ: 260