研究概要 |
生理的状態におけるNa^+-Ca^<2+>交換の活性制御メカニズムを研究する目的で、モルモット心室筋細胞から剥離したインサイドアウトパッチ(マクロパッチ)で、Na^+-Ca^<2+>交換電流(I_<NaCa>)を記録した。ATPまたはPI(4,5)P_2を細胞質側から与えるとI_<NaCa>は増強された。PI特異的phospholipaseCでパッチ膜を処理し、PIからPI(4,5)P_2への反応を抑制すると、ATPによるI_<NaCa>増強効果の約80%が抑制された。このことは、ATP効果の大部分がPIからPI(4,5)P_2を生成する反応によることを示唆する。一方で、非加水分解性ATPアナログのうちATP-γSはI_<NaCa>を増強した(ATP効果の約30%)が、AMP-PNPは効果がなかった。さらに、チロシンフォスファターゼ阻害剤(vanadate、bpV(phen))はI_<NaCa>を増強した。これらの実験結果から、ATPのI_<NaCa>増強作用の一部にはPI(4,5)P_2産生を介さず、蛋白質リン酸化(おそらくチロシンリン酸化)を介する反応があることが示唆された。 Na^+-Ca^<2+>交換サブタイプの一つNCX3の活性制御メカニズムを調べる目的で、アフリカツメガエル卵母細胞にNCX3蛋白を発現させ、インサイドアウトジャイアントパッチ法を用いてI_<NaCa>を記録した。NCX3には細胞質側Ca^<2+>で活性化される機構のみならず、不活性化する機構の両者が存在することが明らかになった。不活性化機構が存在するために、NCX3はNCX1と比べて約10倍、調節性Ca^<2+>に対する親和性が低いことが明らかになった。また、HEK細胞に発現させたNCX3のマクロパッチによるI_<NaCa>解析からは、ATPによる活性化はNCX1に比べて、わずかしか見られなかった。NCX3にはNCX1とは異なる活性調節機構が存在することが示唆された。
|