マウスを種々の温度環境下で2週間飼育した.コントロール群の動物は同様の期間20-25度Cの環境下で飼育した。マウスを寒冷で2週間飼育し寒冷馴化させると、体温は一定に保たれるが、自律神経遮断下での固有心拍数が著しく減少した。パッチクランプの実験でGタンパク依存性のカルシウムチャネルの遅い不活性化が発現することを明らかにした。これらの原因を個体レベルでのメカニズムを解析するために、マウス心電図記録によりin vivo条件下での心ペースメーカー細胞の機能を解析した。その過程で心拍調節と呼吸との関係について従来考えられてきた以上に、心拍自律神経調節が呼吸に依存していることを発見し、その原因を数理的に解明した。 そこで、ヒトでの自律神経調節機能定量化のための装置を開発した。自由に活動している状態で呼吸を測定するためにインピーダンス測定法を用い、肺気量測定ができる高精度のスパイロメーターを開発した。また、胸郭内の血液量もインピーダンスによって測定する万法を開発した。定量的な解析にもとづいて、心拍調節は呼吸に起因することをあきらかにし、長時間の心拍数を計算で予測することが可能となった。また、被験者はこの装置を用いて短時間に心拍数をコントロールできる方法を学習できる。このあたらしい理論に基づいた測定装置・治療装置が家庭レベルで普及可能となるように、装置や解析プログラムを使いやすいものにした。新理論は健康度の測定のみならず、心ペースメーカー制御、バイオフィードバックなど広い分野に応用できる。現在特許の申請を準備中である。
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