研究概要 |
心筋細胞のβ-adrenergic receptor -PKA依存性Cl電流(I_<Cl,PKA>)に及ぼす細胞外ATPの効果を検討した。モルモット心室筋細胞にwhole cell clamp法を適用し,背景電流のみが記録できる内外液条件下にランプ波を印加して(I_<Cl,PKA>)を測定した。ATPは単独では(I_<Cl,PKA>)を活性化しなかったが,isoprenaline(Iso)によって(I_<Cl,PKA>)を活性化した後ATP(50μM)を作用させると、ほぼ全実験例で(I_<Cl,PKA>)が増加した。そのうちの約2/3の例では増加の前に一過性に(I_<Cl,PKA>)が減少するのが観察された。すなわちATPは2相性の効果を示し、電流増強はATP添加後約1分でピークに達した。Adenosine(50μM)とAMP(50μM)は(I_<Cl,PKA>)を抑制するのみで,ADPおよび非水解性ATP analogueであるATPγSの効果はATPと同様であった。また,ATPによる初期の(I_<Cl,PKA>)抑制効果は,P1-purinoceptor antagonistであるtheophylline(0.2mM)やDPCPX(10μM)添加によって消失した。これらのことからATPによる初期の(I_<Cl,PKA>)抑制はP1-purinoceptor刺激によるものであり,増強効果はP2-purinoceptor刺激によると考えられる。電流増強の程度は、ATP50μMの場合、Iso(01-1μM)で活性化した(I_<Cl,PKA>)を約1.3倍にした。ATPの(I_<Cl,PKA>)増強効果のEC_<50>は約1μMであった。Isoを連続投与中にATPの添加と除去を行うと,除去後も(I_<Cl,PKA>)の増強は数分持続した。以上、モルモット心室筋細胞において、ATPによるP2-purinoceptor刺激はβ-adrenergic receptor刺激による(I_<Cl,PKA>)活性化を促進する。この促進作用はATP除去後も数分持続する。 PKCのactivatorであるPDBuなどがモルモット心室筋細胞の(I_<Cl,PKA>)を増強するという報告がなされている。このPDBuの効果はここに示したATPの効果に似ており、今後はPKCのactivatorおよびinhibitorを併用した実験などを行い、ATP作用のメカニズムを解析していく予定である。
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