研究概要 |
モルモット腸間膜動脈内皮細胞の内腔側膜あるいは底部側膜を区別して、パッチ電極によるギガシール形成が可能な、平滑筋層を除去した2種類のシート状内皮細胞標本を開発した。どちらの標本においても、whole-cell clamp法により正常な内皮細胞同士間で観られる電気的結合が保持されていることが示され、今後の内皮細胞研究に有用な標本であることがわかった。電流固定下で測定した内皮細胞の膜電位は-数mV〜-30mVの範囲にあった。アセチルコリン(ACh,3μM,1分間)を投与すると、どちらの標本でも多くの場合は初回投与で脱分極反応が観られたが、10分間の回復期をとって繰り返し投与すると徐々に過分極反応が誘導された。この現象の機序については不明であり、今後の課題の一つである。AChによる脱分極あるいは過分極反応に関与するイオンチャネルを特定するために、底部側膜にcell-attached patch clamp法を適用した。ACh投与によりコンダクタンスが27pSのチャネルが活性化された。また、パッチによってはその2倍のコンダクタンスを持つチャネルも観られた。それらのチャネルの逆転電位はパッチ内外のK^+やCl^-濃度を変化させてもほとんど影響されなかったので、非選択性陽イオンチャネルであると考えられた。AChによる脱分極反応はそれらのチャネルの活性化によるものと推測される。今後の課題としては、AChによる過分極反応に関わるK^+チャネルの同定や、それらのイオンチャネルの内腔側膜と底部側膜での分布差の解明などが挙げられる。
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