膜電位依存性プロトンチャネルによるシグナリング機構の解明

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14570045
• 研究機関: 大阪市立大学
• 研究代表者: 久野 みゆき 大阪市立大学, 大学院・医学研究科, 助教授 (00145773)
• キーワード: プロトンチャネル / 温度依存性 / プロトンシグナル / 細胞膨化 / pH調節 / 酸感受性 / ホルボールエステル / ミクログリア

研究概要

開口すると短時間に大量のH^+を細胞外に排出し細胞内外で急激なpH変動(H^+シグナル)を引き起こす膜電位依存性H^+チャネルのユニークなH^+透過機構を解明するために、その特徴として知られる高い温度依存性(high Q_<10>)の特性を検討した。定常電流振幅のQ_<10>は>2.0、活性化時定数・活性化遅延・脱活性化時定数のQ_<10>は3-6以上であった。チャネル発現の低いマウス骨髄幹細胞由来マスト細胞(BMMC)、発現の高いラットミクログリアで上記のQ_<10>値に差は無く、高い温度依存性がH^+チャネルによく保存されている性質であることがわかった。定常電流でのQ_<10>はwater-filled pore channelに一般に言われる値に比し極めて高いが、30度以上でQ_<10>が急に低くなる(〜1.2)場合が観察された。gatingパラメータの温度依存性にはこのような変極点は見られなかった。細胞膜を介するpH勾配を高くすると(ΔpH=〜3.8)、より低い温度でQ_<10>が低下した。また、高浸透圧細胞内液で膨化させると、20-36度にわたってQ_<10>は低値を示した。この結果から電流振幅の温度依存性には2つの相(low and high Q_<10>)があることが明らかになった。私達はQ_<10>が未だ謎であるH^+チャネルのイオン透過機構を解明していく上で極めて重要な指標であると考えており、現在、破骨細胞やミクログリアを用いてH^+チャネル活性を変動させる条件(ホルボールエステル、cell acidosisの負荷と除去、酸刺激など)でのチャネル活性の性質を検討している。これらを含め「Q_<10>を変動させる」調節要因、あるいは実験条件の検討を引き続いて進める予定である。結果の一部は米国骨代謝学会(2002)、米国神経科学学会(2002)、米国生物物理学会(2003)などで報告した。

研究成果

• [文献書誌] Sakuta, K., Morihata, H., Mori, H., Sakai, H., Kuno, M.: "Cell swelling as an intermediate signal leading to activation of a Cl^-channel in extracellular calcium-sensing of murine osteoclasts"Osaka City Med. J.. 48. 29-38 (2002)
• [文献書誌] Sakuta, K., Sakai, H., Mori, H., Morihara, H., Kuno, H.: "Na^+-dependence of extracellular calcium-sensing mechanisms leading to activation of an outwardly rectifying Cl^-channel in murine osteoclasts"Bone. 31. 374-380 (2002)
• [文献書誌] Shimakawa, S. et al.: "Neuropilin-2 is overexpressed in the rat brain after limbic seizures"Brain Res.. 956. 67-73 (2002)
• [文献書誌] Mori, H., Sakai, H., Morihata, H., Yamano, T., Kuno, M.: "A voltage-gated H^+ channel is a powerful mechanism for pH homeostasis in murine osteoclasts"Kobe J. Med. Sci.. 48(in press). 87-96 (2002)
• [文献書誌] Mori, H., Sakai, H., Morihata, H., Kuno, M.: "Protein kinase C affects activities of a voltage-gated proton channel in murine osteoclasts"J. Bone Miner. Res.. 17(Supple.1). 457 (2002)
• [文献書誌] Morihata, H., Tsutada, T., Kawawaki, J., Miki, T., Kuno, M.: "Calcium responses induced by external acidification and vanilloid receptor agonists in rat microglia"Abstracts (32^<th> Annual Meeting of Society for Neuroscience, Orland, Florida, November 2-7, 2002). 448 (2002)