開口すると短時間に大量のH^+を細胞外に排出し細胞内外で急激なpH変動(H^+シグナル)を引き起こす膜電位依存性H^+チャネルを介するH^+シグナリングの調節機構を骨髄幹細胞由来マスト細胞(BMMC)・破骨細胞・マイクログリアで調べた。H^+チャネルのQ_<10>は、コンダクタンスでは>2.0、gatingパラメータでは3-6と高く、チャネル発現の低いBMMC、発現の高いマイクログリアで差は無く、高い温度依存性は発現調節と無関係によく保存されていた。コンダクタンスのQ_<10>は高温で急に低くなる場合があり、膨化細胞では低値しか示さないことから、チャネルの活性化状態が一様ではないことが推測された。次に穿孔パッチ法を用い内因性バッファー作用下で様々な細胞アシドーシスを導入し、intactな細胞でH^+チャネルを制御する機構を検討した。破骨細胞では、ホルボールエステル刺激によってアシドーシスとH^+チャネル活性化が生じ、細胞内pH変動は逆転電位によってリアルタイムに検出できた。マイクログリアではアシドーシスの様式に関わらずチャネル活性化とH^+排出による細胞内pHの上昇が起こり、アシドーシスの解除と共にチャネル活性が低下した。チャネル活性化の時間経過はアシドーシスの成因によって異なり、pH非依存性の修飾を受ける場合もあった。また細胞アシドーシスはしばしば細胞内Ca^<2+>濃度の上昇を伴い、H^+のカウンターイオンであるCl-fluxを増強するなど、H^+シグナルが他のイオンシグナルと連動することが示唆された。これらの結果により、H^+チャネルがpH環境の変化に即応して細胞内pHホメオスターシスを維持すると同時に細胞外にH^+シグナルを発信する実態が明らかになった。
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