研究概要 |
1.局麻薬lidocaine誘起てんかん様発作放電の発現機構 成熟ラット(雄性、250〜350g)の海馬スライス標本を作成し、2MK acetate充填電極(入力抵抗50〜80MΩ)を用いて、CA1錐体細胞から細胞内記録を行った。局所刺激電極をCA1-CA2境界領域に留置し、20秒間隔で電気刺激(2〜3V,30〜100μs)を行い、シナプス後電位を誘起した。興奮性および抑制性混合シナプス後電位(PSPs)は低濃度lidocaine(1〜30μM)灌流投与で振幅が増大し、活動電位が重畳した。また、PSPsの脱分極勾配が急峻になるか、単峰性のPSPが、多峰性のPSPsになった。PSPsのdecay time constantはlidocaineの濃度が憎すにつれて増加した。GABA_A受容体拮抗薬bicuculline(20μM)存在下に興奮性シナプス後電位(EPSPs)に対するlidocaine(1〜1000μM)の効果を検討すると、低濃度では振幅の増加は見られず、高濃度(>30μM)において振幅の減少が見られ、そのIC_<50>は68±40μMだった。イオン透過型グルタミン酸受容体拮抗薬AP5(100μM)およびCNQX(20μM)存在下に誘起した抑制性シナプス後電位(IPSPs)は比較的低濃度のlidocaine(>1μM)灌流投与から振幅の減少が見られ、そのIC_<50>は7±11μMだった。また、細胞外記録法によりCA1領域のfield PSPsおよびEPSRsが低濃度lidocaine(1〜30μM)で増強され、てんかん様発作放電が発生することを昨年報告している。以上の結果を比較検討すると、lidocaineによるfield EPSPsの増強はGABA性のfeedfowardおよびfeedback inhibitionが低濃度lidocaine(1〜10μM)で抑制されることによりEPSPsが増強したものと考えられる。つまり、興奮性入力に比べGABA性の抑制性入力がlidocaineにより抑制されやすい性質を有するので、低濃度lidocaineによりてんかん様発作放電が発生するという結論を得た。 なお、研究実施計画2.「lidocaineによる興奮性伝達物質放出修飾機構」については、グルタミン酸誘起脱分極電位がlidocaineにより抑制されないことから、シナプス前性に興奮性伝達物質の放出が修飾を受けていると考えられる。
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