成熟ラット海馬スライス標本を作成し、CA3、およびCA1領域から細胞外記録を行い、種々の濃度(1〜100μM)の局所麻酔薬、リドカインを灌流投与すると、fieid PSPs(fPSPs)およびfield PSPs(fPSPs)の一過性抑制に引き続き持続性増強に伴うてんかん様発作放電がみられた。Presynaptic volleyはリドカイン濃度依存性に抑制された。fPSPsおよびfPSPs(f(E)PSPs)のリドカイン誘起一過性抑制は、A_1受容体拮抗薬、DPCPX(1μM)存在下に消失した。CA1錐体細胞から細胞内記録を行い、evoked fast EPSPsおよびevoked fast IPSPに対するリドカインの効果を検討すると、両者ともリドカイン濃度依存性に持続性抑制がみられ、その平均IC_<50>はそれぞれ68μMおよび7μMだった。Fast EPSPsとfast IPSPsを含むevoked PSPsではリドカイン低濃度(≦30μM)投与によりfast and late IPSPs抑制に随伴したfast EPSPs増強がみられた。さらに、リドカイン低濃度投与はDPCPX(1μM)感受性の一過性過分極電位を発生した。Glutamate誘起脱分極電位およびGABA誘起過分極電位はリドカインにより変化しなかった。また、CA3錐体細胞におけるDPCPX感受性アデノシン誘起過分極電位はリドカインにより抑制された。さらに、fEPSPsのリドカイン誘起持続性増強はCA3切除とCA2領域stratum oriens切断の組み合わせで、著しく抑制された。これらの結果は、リドカインによるf(E)PSPs一過性抑制は主にCA3錐体細胞におけるA_1受容体活性化による過分極電位発生が関与すること、f(E)PSPs持続性増強はGABA性feedfowardおよびfeedback inhibitionの脱抑制のよることを示唆した。また、興奮性神経終末でのA_1受容体を介するシナプス前抑制がリドカインにより減弱することもf(E)PSPs持続性増強の発生に関与する可能性が示唆された。さらに、CA2、CA3両領域からCA1領域へのシナプス入力とCA3領域内の反回興奮伝搬回路がfEPSPsの一過性抑制と引き続く持続性増強の発生に必須であるという結論を得た。
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