エンドセリン-1(ET-1)によるラット肺動脈の収縮が、ET受容体のどのサブタイプによるものかを同定するため、ET_A及びET_B受容体に特異的なアゴニスト、アンタゴニストを用い実験を行った。報告されている十分量のブロッカーを用いても、ET-1による収縮反応、及び細胞内Ca^<2+>濃度([Ca^<2+>]_i)上昇を部分的にしか抑制できないという複雑な結果を得た。特に、ET_A受容体の特異的ブロッカーであるBQ-123に対し感受性が低かった。次に、ET-1および、ミトコンドリアの呼吸阻害薬であるFCCPや、細胞内酸化還元反応に影響を与えるH_2O_2による影響を調べた。ET-1、FCCPおよびH_2O_2の投与により、顕著な[Ca^<2+>]_i上昇が観察され、これらは電位依存性Ca^<2+>チャネル抑制剤であるnifedipine、あるいはnicardipineにより抑制されなかった。とくに、ET-1による[Ca^<2+>]_i上昇は、PLCを抑制するU-73122、および膜透過性のIP_3受容体ブロッカーである2APB、あるいはXestospongin Cの投与により顕著に抑制された。この受容体依存性Ca^<2+>チャネルがTRPC(transient receptor potential channel)蛋白である可能性が示唆された。そこで、RT-PCR法を用いた結果、TRPC1、TRPC4、TRPC5、TRPC6、そしてLTRPC7のTRPCサブタイプの存在を確認した。受容体刺激による反応と薬理作用が、報告されているTRPCの性質と重複するものがあり、その関与が示唆された。この結果を踏まえ、今後、より詳細に調整メカニズムを検討していく必要がある。
|