細胞内カルシウムイオンは筋肉の収縮、神経活動、ホルモン分泌といった生体内の活動を制御する重要な働きを担っている。したがって細胞内のカルシウム濃度を測定することは細胞の機能を研究する上で非常に重要である。この研究はGreen Fluoresent Protein(GFP)の青色変異体を用いて蛋白質性のカルシウムセンサーを開発することを目的としている。このセンサーは遺伝子でコードされているため特異的プロモーターを用いて遺伝子を発現させることにより特異的な細胞から測定を行うことができる特徴があり、in vivoでの利用が期待される。 我々はシアン色のGFP変異体であるCFPにカルモジュリンとミオシン軽鎖キナーゼのM13断片を結合し、シアン色の蛍光を発するカルシウムセンサー(C-CaMP)を作成することに成功した。HEK細胞またはPC12細胞に遺伝子を導入して蛋白質を発現させると、ATPやカルバコールといったアゴニストの刺激により細胞内のカルシウム変化をCCDカメラで捉えることができた。興味深いことに、このセンサーはカルシウムが低いときに明るく光、カルシウムが多くなると暗くなるといった性質を持っていた。 このセンサーにはカルシウムが4つ結合するが、次にカルシウム結合部位を系統的に破壊することによりその効果を検討した。その結果カルシウム結合部位を3つ以上破壊するとカルシウムイオン濃度に対する感受性が著しく影響されるとともに蛍光変化の大きさも大きく影響され、センサーとしての機能が著しく障害されることが明らかとなった。また1つまたは2つのカルシウム結合部位を破壊したものは、ややカルシウムに対する感受性が低下したが十分に使用できるものであり、カルシウム緩衝能が低くなっているだけ細胞内での使用には好都合であった。
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