研究概要 |
CS系マウスは,恒暗条件での行動のサーカディアンリズムにリズム・スプリッティングを示す.スプリッティングの生後発達との関連を明らかにすることを目的とし,仔マウスの脳内時計遺伝子リズムの発達段階における変化を検討した.CSと比較するために,ラットの脳内時計遺伝子リズムの発達を検討した.さらに,体内時計関連覚醒物質である脳内ヒスタミンのリズム発達における役割を検討する目的から,ヒスタミン合成酵素欠損マウスの行動および時計遺伝子リズムをまず成体で調べた. 【CS系の時計遺伝子リズム発達】スプリッティングが離乳前から生じているかを明らかにするため,生後2週齢と3週齢の視交叉上核(SCN)およびそれ以外の脳部位における時計遺伝子Per1/Per2の発現リズムをin situ hybridization法により調べ,成体の時計遺伝子リズムと比較した.まず成体のPer1/Per2発現リズムは,行動リズムが明確なスプリッティングを示しているにも関わらず,SCNでは単峰性であったが,SCN以外の脳部位(大脳皮質など)では明確な2峰性を示した.仔マウスについては,今年度のCS系の繁殖が悪かったため個体数を揃えるのに時間を要し,現在データ解析中である. 【ラットの時計遺伝子リズム発達】仔ラットのPer1/Per2発現リズムが母ラットのリズムにより受ける影響は,仔ラットの発達段階に依存して異なることがわかった.生後3週齢で,仔ラットのPer1とPer2が母ラットから受ける影響が異なること,さらに,生後1週齢で,母ラットの一定時間の隔離により,仔ラットのPer1/Per2リズムがリセットされることがわかった. 【ヒスタミン合成酵素(HDC)欠損マウスの行動および時計遺伝子リズム】成体のHDC欠損マウスは,野生型に比べ,行動リズムではフリーランリズムが延長すること,時計遺伝子リズムではSCN以外の脳部位でリズムが消失することがわかった.このことから,ヒスタミンが体内時計機構において重要な役割をもつことが示唆された.
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