第三脳室腹側前部のADH分泌制御機構における興奮性アミノ酸とPGの機能連関の解明

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14570055
• 研究機関: 新潟大学
• 研究代表者: 山口 賢一 新潟大学, 大学院・医歯学総合研究科, 助手 (50108023)
• キーワード: 第三脳室腹側前部(AV3V) / 抗利尿ホルモン(ADH) / 出血 / グルタミン酸 / プロスタグランジンE2 / NMDA受容体 / 向代謝性受容体 / 血糖調節

研究概要

本研究の目的は、第三脳室腹側前部(AV3V)の種々のグルタミン酸受容体が、体液成分や心血管制御等に果たす役割を調べ、それらがPGE2との機能的連関によって、抗利尿ホルモン(ADH)分泌に働く可能性を追求することだった。研究は、覚醒ラットを用い、交付申請書記載の如く行い、次の結果を得た。(1)体重1%の血液を大腿動脈から二度除去し(H1,H2)、非降圧性、降圧性の低容量を惹起した。H2後、血漿(P)ADH、アンギオテンシンII(ANGll)、浸透圧(Osm)、グルコース(Glc)が増大し、PK+は減少したが、H1は効果がなかった。NMDA受容体(R)阻害薬MK-801(MK)を出血前にAV3Vに与えると、H2後の動脈圧(AP)、ANGll、Osm、Glc等の反応は変わらずに、ADH反応のみが著しく減衰した。MKの脳室内投与や向代謝性GluR阻害薬MCPGのAV3V投与では、変化が生じなかった。(2)NMDAのAV3V投与は、PADH、AP、HRと共に、POsmとPGlcを一過性に上昇させた。後二者の変化は同じ時間経過を辿り、POsm上昇の32%はGlc上昇に因るものだった。PNa^+、K^+、Cl^-は変化しなかった。(3)PG産生阻害薬のAV3V注入は、H2や高張NaClの静脈投与によるPADH反応を抑制し、PGE2のAV3V投与によるPADHの増加は、MK又はMCPGの前投与で阻害された。しかし、AV3Vに植えた透析プローブによって集めた脳組織液中のPGE2濃度は、H1、H2、高張NaClの投与によって有意に変動しなかった。以上の結果から、(1)AV3VのNMDA受容体は、PGE2と協調して降圧性出血下のADH分泌に働くこと、(2)この受容体は、血糖上昇機能を有するが、降圧性出血下の血糖反応には寄与しないこと、等が考えられる。

研究成果

• [文献書誌] Ken'ichi Yamaguchi: "A study on the mechanism by which sodium nitroprusside, a nitric oxide donor, applied to the anteroventral third ventricular region provokes facilitation of vasopressin secretion in consciousrats"Brain Research. 968. 35-43 (2003)
• [文献書誌] Ken'ichi Yamaguchi: "Involvement of AV3V NMDA receptors in the osmotic and volemic ADH secretion"Japanese Journal of Physiology. 53Suppl.. s291-s291 (2003)
• [文献書誌] 山口賢一: "一酸化窒素ドナーによる中枢性バゾプレッシン分泌の亢進と作用機序の探究"日本内分泌学会雑誌. 79(2). 367-367 (2003)
• [文献書誌] Ken'ichi Yamaguchi: "NMDA receptors in the AV3V may mediate osmotic AVP secretion without depending on enhanced production of nitric oxide"Proceedings of the 2003 World Congress On Neurohypophysial Hormones. 94-94 (2003)
• [文献書誌] Ken'ichi Yamaguchi: "Cerebral areas and bioactive substances involved in hyperosmolality-evoked AVP secretion"Proceedings of the 2003 World Congress On Neurohypophysial Hormones. 95-95 (2003)
• [文献書誌] Kenichi Watanabe: "Betaxolol improves the survival rate and changes natriuretic peptide expression in rats with heart failure"Journal of Cardiovascular Pharmacology. 41(Suppl.1). S99-S103 (2003)