研究概要 |
本研究の目的は、第三脳室腹側前部(AV3V)におけるGlu受容体とPGE2の機能的連関を追求することだった。研究は、今年度の交付申請書に記した通り行い、次の結果を得た。 1.覚醒ラットAV3VへのPGE2注入は、血圧と心拍数を高め、ADH分泌を刺激した。血漿浸透圧やNa^+,K^+,Cl^-の濃度は不変だった。PGE2の作用は、アデニル酸シクラーゼ阻害薬SQ22536(25μg)を前投与しても、変わらなかった。しかし、ヒスタミンH1受容体阻害薬ピリラミン(50μg)を前投与すると、ADH分泌や頻脈作用は変わらないものの、昇圧作用が抑制された。ピリラミンは、ヒスタミンの昇圧作用も抑えた。H2受容体阻害薬シメチジンを前投与しても、PGE2によるADH分泌、昇圧、頻脈は変わらなかった。 2.PGE2のAV3V注入に先立って、GluのNMDA受容体阻害薬MK-801,又は向代謝性の受容体阻害薬MCPGを投与すると、PGE2によるADH分泌は抑制されたが、昇圧、頻脈反応は不変だった。MK-801,MCPGの前投与は、各々のアゴニストであるNMDA、t-ACPDのAV3V注入によるADH分泌と昇圧作用を抑えた。 3.高張NaClを1h静注すると、ADH分泌が促進し、血漿浸透圧は平均28mosmol、Na^+は15mosmol/l、血圧は18mmHg上昇した。微小灌流で集めたAV3V間質液中のPGE2濃度は、高張NaCl注入前の値を100%とすると、注入30分後は103%(N=7)、60分後も103%であり、有意に変化しなかった。微小灌流によるPGE2の回収率は約3%だった。 4.体重の1%の血液を30分間隔で3度除去し、脱血前後に集めたAV3V灌流液中のPGE2濃度を測定した。血圧は1回目の脱血後、脱血前に比べて平均21mmHg、2回目の脱血後、41mmHg低下した。ADH分泌は著しく昂進し、血漿浸透圧、グルコース、アンギオテンシンIIも増大した。しかし、AV3V灌流液中のPGE2濃度は、脱血前を100%とすると、初回脱血後に平均88%(N=4)、2度目の脱血後に107%となり、有意に変化しなかった。
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