1.覚醒ラットのAV3Vに、GluのNMDA受容体や向代謝性受容体の作動薬(NMDA、t-ACPD)を注入すると、ADH分泌の促進と昇圧、頻脈反応が、用量依存性に生じた。NMDAは浸透圧、血糖、赤血球容積率も高めたが、t-ACPDは無効だった。NMDAの作用はMK-801の、t-ACPDの作用はMCPGの前投与で抑制された。 2.PGE2のAV3V注入は、ADH分泌を強め、血圧、心拍を高めた。MK-801やMCPGを前投与すると、PGE2によるADH分泌が抑制され、昇圧・頻脈作用は変わらなかった。ヒスタミン阻害薬ピリラミンを前投与すると、PGE2の昇圧作用のみが抑えられた。cAMPの注入はPGE2様作用を示したが、PGE2に先立ち、cAMP産生阻害薬SQ22536を与えても、PGE2の効果は不変だった。 3.高張NaClの静脈注入はADH分泌と血圧を漸次増加させた。MK-801をAV3Vに与えると、高張NaClによるADH分泌が選択的に抑制されたが、MCPG投与には効果がなかった。 4.大腿動脈から血液を除去し、非降圧性及び降圧性出血を惹起した。降圧性出血によって(非降圧性出血は効果なし)ADH、アンギオテンシンII、浸透圧、血糖が増大した。出血前にMK-801をAV3Vに与えると、降圧性出血に伴うADH反応が抑制された。その他の因子の反応は変わらなかった。MK-801の脳室内投与やMCPGのAV3V投与は、出血によるADH反応に影響しなかった。 5.一酸化窒素(NO)発生薬ニトロプルッシド(NP)をAV3Vに注入するとADH分泌が増加した。その作用は、NO捕捉剤ヘモグロビンの前投与で抑制された。NP注入前にメチレンブルー(NOによるcGMP産生促進を阻害)を与えてもADH反応は抑えられず、cGMPの注入はADH分泌を変えなかった。 6.AV3Vの間質液をマイクロダイアリシスによって回収し、その中に含まれるPGE2濃度を調べると、高張食塩水の静脈注入も、降圧性、非降圧性の出血も、全て有意には影響しなかった。
|