絶食時におけるほ乳類の非活動期特異的な体温低下のメカニズムを実験的に考察した。実験は、人工的に12:12時間の明暗サイクル、23度の環境下に飼育したラットを自由摂食2日間の後、3日間絶食させた、この間の体温、活動量、代謝率の変動を連続的に測定し、またラットにおける重要な熟放散機構の1つである尾部血流の変動をその表面温度をデジタルサーモグラフィーにより測定することにより評価した。まず絶食によって代謝率(熱産生)の著明な低下とその日内変動の振幅が低下した。しかしながら、活動期における体温は自由摂食時と変化なく維持され、非活動期においては、その前半6時間の著明な体温の低下を認めた。代謝率と体温の関係の解析により、自由摂食時には代謝率(熱産生)の変動により大きく体温が決定されているのにたいして、絶食時においては熱放散機構の変化により体温の概日リズムが決定されているのがわかった。サーモグラフィーによる解析によっても、ラットの活動期においては尾部皮膚温の著明な低下が認められ、この推測を強く支持した。すなわち、摂食条件は大きく体温調節機構に影響を及ぼし、かつ活動期の体温を一定に保つよう働いていると考えられる。さらに、このメカニズムには生物時計が大きく関わっていると推測された。 生物時計の体温調節反応に対する役割を解析するため、さらに近年見つかった時計遺伝子の1つであるcryのノックアウトマウスを用いて実験を行った。この動物においては、体温の変動は完全に代謝率に依存しており、概日リズムを形成するメカニズムは認められなかった。すなわち、生物時計は強く体温調節機構をコントロールしていることが明らかになった。現在データを解析中であり、15年度のはじめに投稿、発表予定である。また15年度はさらに組織、分子生物学的手法により、生物時計と絶食時の体温調節機構の関係を明らかにしていく予定である。
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