研究概要 |
前年度に引き続き本年度の研究は、申請者らの「内分泌撹乱物質は,ノン・エストロジェニック作用により特に前頭葉機能に影響し,学習獲得過程を障害する」という仮説を検証するために行った。1)成熟ラットにビスフェノールA(BPA)、ノニルフェノール(NP)、もしくはオクチルフェノール(OP)を投与して、前年度に明らかにした前頭葉新皮質のプロジェステロンmRNA発現誘導が、BPA以外の内分泌撹乱物質でも同様に惹起されるか否かを検討した。その結果、前頭葉新皮質ではBPAと同様に、NPおよびOP投与によりPR mRNAの発現は有意に増加したが、NPおよびOP投与は後頭葉新皮質および側頭葉新皮質のPR mRNA発現には有意な変化を惹起しなかった。従って、内分泌撹乱物質の中でも新皮質の領域により効果が異なることが明らかとなった。特に、下垂体のPR mRNA発現に対してはNPおよびOPがBPAよりも強い作用を持つことを考えると、作用の部位特異性は単にエストロジェン様作用の強弱ではなく、作用機序が異なることが推測された。2)次に,前頭葉新皮質の急性切片を作製しマクロカルシウムイメージングを行い、BPAの急性投与がカルシウム変動に影響を及ぼすか否かを検討した。その結果、高カリウム刺激により約5%のカルシウム上昇が認められたが、この上昇に対してBPAは有意な影響を及ぼさなかった。刺激の種類をかえて検討する必要性があると考えられた。3)まず、新規導入の装置で、既報の如くオープンフィールド行動の性差が検出出きるか否か検討した。その結果、雌性ラットの方が雄性ラットと比較して、総移動距離の長いことが確認された。現在、BPA投与がこの行動にいかなる影響を及ぼすのか検討している。
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