研究課題/領域番号 |
14570064
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
鷹股 亮 奈良女子大学, 生活環境学部, 助教授 (00264755)
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研究分担者 |
森本 恵子 奈良女子大学, 生活環境学部, 教授 (30220081)
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キーワード | 血漿浸透圧 / 皮膚血管拡張反応 / 能動的血管拡張システム / 血管収縮神経活動 / ブレチリウム / 交感神経 |
研究概要 |
我々は、発汗及び皮膚血管拡張反応の核心温閾値が浸透圧上昇により直線的に上昇することによって体温調節反応を抑制することを明らかにしてきた。 昨年度は、LBNP負荷により中心血液量を減少させた際の前腕血管コンダクタンスの減少が、温熱負荷時においてのみ、血漿浸透圧上昇により大きくなることを明らかにした。このことは、体温上昇時に認められる皮膚血管拡張反応の浸透圧上昇による抑制は、アドレナリン作動性血管収縮神経活動の亢進によるものではなく、主に能動的血管拡張システムの抑制による可能性を示唆する。そこで、本年度は、アドレナリン作動性血管収縮神経の活動をブロックすることにより、浸透圧上昇による温熱性皮膚血管拡張反応の抑制のメカニズムを明らかにする実験を行った。 被験者に3%の高張性食塩水を90分間にわたって輸液を行い、血漿浸透圧を約15mOsm/kg H_2O上昇させた後、交感神経終末からのノルアドレナリン放出をブロックするブレチリウムを前腕の皮膚にイオン泳動法により投与した。その後、被験者に温熱負荷を加え、ブレチリウム処置を行った皮膚とその近傍の非処置部位における皮膚血管コンダクタンスと核心温の関係を求めた。また、同様の実験を等張性食塩水輸液後にも行ない、比較した。高張性食塩水輸液後の温熱負荷時の体温上昇は、1.45±0.15℃で等張性食塩水輸液後の0.91±0.04℃に比べ有意に高かった。皮膚血管拡張の核心温閾値は、高張性食塩水輸液により有意に上昇したが、ブレチリウム処置部位と非処置部位における皮膚血管拡張の核心温閾値にはいずれの血漿浸透圧の条件下においても差が認められなかった。 これらの結果より、血漿浸透圧上昇による皮膚血管拡張反応の抑制は、主に能動的血管拡張システムに対する抑制で、アドレナリン作動性血管収縮神経活動の亢進によるものではないことが明らかになった。
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