体温調節系の反応に対する体液調節系からの影響、特に浸透圧刺激と容量刺激の相互作用が体温調節反応の及ぼす影響を明らかにするために主にヒトを対象とした実験を行なった。さらに、体液調節系機能のメカニズムを明らかにするために、ラットを用いた基礎的な実験も行なった。これらの実験より、以下のことが明らかになった。 体温低下時の体温調節反応である、熱産性量の増加反応と末梢血管収縮反応は、ともに圧受容器からの入力により修飾されることをヒトを対象とした実験で明らかにした。 温熱負荷時には、血漿浸透圧上昇により、容量調節性末梢血管収縮反応が亢進することを明らかにした。この亢進は通常体温時には、認められないことより、血漿浸透圧上昇は血管収縮性神経の活動を亢進させるのではなく、血管拡張反応を抑制している可能性を示した。また、血漿浸透圧上昇による皮膚血管拡張反応の抑制は、能動的血管拡張反応の抑制であることを、ブロッカーを用いた実験より明らかにした。 浸透圧受容部位と考えられている、脳弓下器官の毛細血管水透過性をMRJを用いてin vivoで定量化した。この部位の毛細血管の水透過性は、脳における毛細血管の値としては極めて高く、BBBが存在する皮質における透過性の10-100倍大きいことが明らかになった。この結果は、SFOが血漿(BBBの外側)の浸透圧を受容する部位として機能するに極めて効果的な構造をしていることを示唆する。また、MRIを用いてin vivoで浸透圧刺激時の脳内の活性化部位を同定した。同定された活性化部位は、c-Fosを用いて免疫組織化学的に検出された部位とほぼ同様であることから、この方法の有用性が検証された。
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