研究概要 |
1.ラット離乳後の小腸βカロテン開裂酵素活性の変動とそのメカニズム解明: 空腸βカロテン開裂酵素(BCCE)活性は生後に誘導され、急速な活性上昇が離乳期に起こる。この誘導にホルモン関与の可能性を検証した。小腸細胞の成熟に関与するグルココルチコイド(HC)を生後10日齢に投与すると18日齢にBCCE活性は急上昇し活性誘導の早期化が観察された。 甲状腺ホルモンT3を投与すると17日齢小腸で2.3倍に上昇し、酵素活性は早期誘導された。 肝臓BCCEへのT3の影響はなかった。さらに、離乳後に乳汁から固形食への移行(高脂肪から低脂肪食へ)がBCCE活性の変動をもたらす可能性を究明した。 強制離乳したラットは低脂肪食摂取によりBCCE活性は約2倍に増大し、高脂肪食摂取により活性は低下した。 2.ラット及びニワトリBCCEのクローニング、その遺伝子発現の食事因子による調節機構と発達過程の遺伝子発現の変動を究明: RT-PCRにより、中央開裂酵素(15,15'-BCCE)と非中央開裂酵素(9,10'-BCCE)を小腸と肝臓で確認した。ノーザンブロット法では、それら遺伝子は小腸のみに検出され、その発現は小腸上部で高い。空腸の15,15'-BCCEmRNAは出生前に発現せず、出生後小腸の成熟に伴い発現し離乳期に増大した。それら2つのmRNA発現は高脂肪食摂取により減少した。空腸BCCE遺伝子発現の変動は、酵素活性値の発達過程での変動や食事条件に伴う変動とよく対応した。 3.脂肪食摂取による小腸CRBPII発現増大の生理的意義を究明 高脂肪食摂取は、空腸におけるCRBPII mRNAの増大とカイロミクロン合成に関与するMTPのmRNA発現増大をもたらし、レチニルエステルの血中移行、肝臓への取り込みが亢進した。故に高脂肪食摂取によるCRBPIIの発現増大はレチノール吸収を促し血中への移行を促進することが証明された。
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