1.麻酔・自発呼吸のラット室傍核にオレキシンAを微量局所注入すると、直ちに脳波上で低振幅・速波側へのシフトが出現し、約30秒後に回復した。この覚醒反応は、あくび行動と循環反応(血圧低下)、咀嚼運動を随伴していた。一方、オレキシンBを室傍核に局所投与すると、脳波の覚醒側へのシフトだけが現れ、随伴する反応は認められなかった。以上の結果より、覚醒反応を中継する受容体はOX2である可能性が示唆された。オレキシン細胞は視床下部外側野にあり、脳内のさまざまな領域に軸索を投射し、摂食行動や睡眠・覚醒系に関与している。特に、ナルコレプシーの病態と密接に関与しているとされる。我々のデータは、オレキシン神経の覚醒系への関与が室傍核のOX2受容体を経由して発現していることを示している。この結果は、Behavioral Brain Research 128(2002)に発表された。 2.麻酔・自発呼吸のラット室傍核にヒスタミンを微量局所投与すると、上述のオレキシンAの場合と同様に、脳波上で覚醒側へのシフト(低振幅・速波)が直ちに出現し、あくび行動が随伴した。この反応は、H1アンタゴニストを側脳室投与で消失した。視床下部後部(結節乳頭核)にあるヒスタミン神経は覚醒系としての役割が多方面から確立されてきている。今回の我々の実験結果は、ヒスタミン神経が皮質を賦活する経路に、室傍核が含まれることを明らかにしている。本研究はBehavioral Brain Research 134(2002)に発表された。
|