本年度は、次年度の研究に用いる試料準備を行い、以下のNaチャネル変異体DNAの作成とチャネル変異体発現細胞の作成を行った。 1.Naチャネル変異体DNAの作成 Naチャネルポア内側部を形成すると思われる4つのドメインのS6のうち、ドメインIのS6に着目し、膜貫通領域の下部2/3に相当するアミノ酸(総数18)のシステイン変異体DNAをラット骨格筋Naチャネルαサブユニット(μ1)を用いて体系的に作成した。ドメインI、S6は活性化ゲートの主要構成部位を含み、ドメインIV、S6と同様にI群抗不整脈薬、局所麻酔薬、抗てんかん薬の結合部位を含むことが予想されている。 2.チャネル変異体発現細胞の作成 1で作成した変異体DNAのチャネルを常時発現する細胞をHEK293(human emblyonic kidney cell)で作成(stabl1e lineの作成)中である。安定にトランスフェクションされた細胞の選択はG418(ネオマイシンアナログで行い、発現の確認(Na電流の記録)は、whole-cellパッチクランプ法により行った。現在、7つの変異体チャネルに対してstable lineは作成済みである。 次年度は、チャネル変異体の発現細胞を用い、システイン残基と特異的に結合する化合物と代表的I群抗不整脈薬のリドカインの作用を検討することにより、既に作成しているドメインIV、S6と4つのPループからなるNaチャネルポアコンピューター分子モデルの中に、ドメインI、S6の構造知見とリドカインのドッキングポケットを描写する予定である。
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