研究概要 |
研究実績は以下の3点に要約される。 1.NPC細胞ではISRE-driven geneの発現が亢進している.NPC患者と正常人から得た皮膚繊維芽細胞からmRNAを抽出しcDNAとした後、これをprobeとしてcDNA microarrayを用いてNPC細胞において発現の亢進している遺伝子をスクリーニングした.その結果、NPC細胞ではMxA、2'-5'oligoadenylate synthetaseなど、ISREにより誘導される一群の遺伝子の発現が亢進している事が判明した. 2.NPC細胞/組織ではSTATの蛋白質レベルが高い.1.の生化学的機序を解明するため、転写因子STATの蛋白質レベルを調べた.ヒトNPC細胞において、STAT1-STAT5のレベルの増加が見られ、同様にNPC1欠損CHO細胞においても、STAT1,STAT3-STAT6の増加が認められた.NPC1欠損マウスの肝臓、図の抽出物においても同様の増加が認められ、小脳Purkinje細胞や浸潤するグリア細胞でSTATの抗性が増加していた. 3.NPC細胞は炎症性サイトカイン(IL-6/IL-8およびIFN-beta)を恒常的に産生する.2.の生化学的機序を解明するため、NPC細胞と正常細胞の共培養実験、各々の培養上精による刺激実験を行ったところ、NPC細胞の培養上精中に、STATの発現レベルを亢進させる活性物質が存在することが判明した.ELISAにより40種類以上の既知のサイトカイン濃度を測定したところ、NPC細胞の培養上精中にはIL-6/IL-8が正常細胞の100倍以上の高濃度で存在しており、正常細胞では検出できないIFN-betaが存在した.レポータージーンアッセイおよび中和抗体による阻害実験から、STAT1/STAT3の増加は各々IFN-beta/IL-6によることが判明した. 以上の結果から、NPC細胞は何らかの理由により炎症性サイトカインを恒常的に産生しており、この結果としてSTATシグナル伝達系が活性化されていることがわかった.
|