研究課題/領域番号 |
14570080
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
寺本 憲功 九州大学, 大学院・医学研究院, 講師 (40294912)
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研究分担者 |
関 成人 九州大学, 大学院・医学研究院, 講師 (90294941)
伊東 祐之 九州大学, 大学院・医学研究院, 教授 (80037506)
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キーワード | 平滑筋 / イオンチャネル / 電気生理学 / 不安定膀胱 / 治療薬 |
研究概要 |
近年、膀胱平滑筋に存在するATP感受性K^+チャネル(K_<ATP>チャネル)を標的としそのチャネルを選択的に開口させ膜電位を過分極させ最終的に膀胱平滑筋を弛緩反応をもたらし不安定膀胱の病態を改善するという新規治療法が考えられ、これまで多数のK_<ATP>チャネル開口薬が開発されてきた。しかし現在のところ主に心血管系への副作用により臨床応用可能なK_<ATP>チャネル開口薬は未だ開発されていない。すなわち臓器選択性(特に膀胱選択性)を有するK_<ATP>チャネル開口薬の検索が急務と考えられる。本研究ではヒト膀胱及びヒト血管平滑筋型K_<ATP>チャネルのその分子実体を明らかにし膀胱選択性を有するK_<ATP>チャネル開口薬の創薬や開発に向けての糸口をつけることが研究目的である。 最近の分子生物学的研究によりK_<ATP>チャネルは、少なくとも2種類の蛋白質、すなわちチャネルポアを形成する内向き整流性カリウムチャネル(Kir ; inwardly rectifying K^+ channel family 6)とスルフォニルウレア受容体(SUR ; sulphonylurea receptor)により構成されていることが明らかとなった。KirとSURにはそれぞれ数種類のサブタイプが存在しそのサブタイプの組み合わせが臓器によって異なりK_<ATP>チャネルの臓器特異性を決定していると考えられる。例えば膵臓β細胞型K_<ATP>チャネルはKir6.2/SUR1、心筋型K_<ATP>チャネルはKir6.2/SUR2Aの組み合わせと考えられている。一方平滑筋型K_<ATP>チャネルに関しては動物種や臓器によってKirとSURの様々な組み合わせが報告され特にヒト膀胱平滑筋K_<ATP>チャネルに関してはその組み合わせの蛋白レベルでの報告は未だ殆ど理解されていない。我々はパッチクランプ法を用いて単離ヒト膀胱平滑筋細胞のK_<ATP>チャネル特性を検討した。ヒト膀胱平滑筋K_<ATP>チャネルは細胞内ATP感受性や単一チャネルコンダクタンスの大きさが、従来、血管平滑筋K_<ATP>チャネルで報告されてきた特性とは明らかに異なっていた。すなわち血管平滑筋K_<ATP>チャネルでは主にKir6.1が発現していると考えられてきた。ヒト膀胱平滑筋K_<ATP>チャネルは既報のKir6.2を有するK_<ATP>チャネルの特性と極めて類似していた。RT-PCR法を用いて膀胱平滑筋K_<ATP>チャネルのKirサブタイプのmRNAレベルの発現を確認した。またウェスタンブロット法でも同様にKir6.2の蛋白を検出した。以上の結果からヒト膀胱平滑筋細胞のK_<ATP>チャネルはこれまでの平滑筋型K_<ATP>チャネルとは異なるKir6.2のチャネルポアから構成されている可能性が示唆された。現在この結果をまとめて論文投稿の準備を行っている段階である。 今後、同様の実験方法をSURに関しても行う研究計画でありウェスタンブロット法に用いるSURの抗体作成を終えた段階である。また、臨床診断により不安定膀胱と診断された患者の膀胱平滑筋標本も実験に使用し病態でのK_<ATP>チャネルの分子実体も明らかにしてゆきたいと考えている。
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