研究概要 |
1.ecto-nucleotidase発現ベクターの構築と酵素活性の解析 細胞外のATP分解に関与するecto-nucleotidaseの全長cDNAをRT-PCR法で単離し、哺乳動物細胞用の発現ベクターを作成した。現在までにecto-ATPase(CD39L1), ecto-apyrase(CD39),nucleotide pyrophosphatase/phosphodiesterase(NPP)1, NPP2, ecto-5'-nucleotidase(CD73)およびecto-alkaliephosphatase(ALP)の基質特異性、阻害薬の検索を行った。新しい知見として従来P2レセプターの阻害薬として用いられていたPPADSなどの薬物が、強力なNPP1およびALPの阻害剤であることが判明した。また、ATP分解酵素を発現させた細胞の機能解析から、ATP分解酵素はP2受容体を脱感作から保護するとともに、アデノシンの産生を介してATPによるP1受容体刺激に関与することが明らかになった。 2.ecto-nucleotidaseの細胞内局在 各ecto-nucleotidaseのcDNAとGFPの融合蛋白を発現させ、酵素の細胞内局在を観察した。ecto-nucleotidaseは細胞膜表面に分布し、P1、P2受容体刺激により細胞内局在の変動が認められた。特にALPはアデノシンA_<2A>受容体の脱感作によるエンドサイトーシスと共に細胞表面から細胞内に移動したことから、細胞膜上でALPとA_<2A>受容体が共存していることが示唆された。 3.ecto-nucleotidaseの活性調節機構の解析 各ecto-nucleotidascは酸化ストレス下で活性が阻害された。また、CD39やCD39L1は動脈硬化誘引因子の1つとして考えられているリゾリン脂質により、細胞表面から消失したことから、病態との関連が示唆された。
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