骨格筋型RyR(RyR1)は骨格筋細胞における細胞内貯蔵Ca^<2+>の生理的Ca^<2+>放出(PhCR)チャネルとして機能するが、一方ではCa^<2+>によるCa^<2+>放出(CICR)チャネルの性質をも有する。すなわち、RyR1分子は異なる刺激に対して、二種類のモード(PhCRモードおよびCICRモ-ド)で開口すると考えられている。本研究ではRyR1を介するCa^<2+>放出に強く影響を与える薬物とその誘導体を薬理的道具として用い、2種の開口モードがそれぞれチャネル分子のどのような分子形態に基づくものかを明らかにするために実験を計画した。そして以下の結果を得た。 平成14年度の計画によりCa^<2+>放出を強く抑制するダントロレン(Dan)の新規誘導体GIF-0082はPhCRのみを抑制することを明らかにし、その合成法を報告した。さらにDanとはまったく逆の作用、すなわちCa^<2+>放出促進作用を有する新規Dan誘導体も見出した。GIF-0082はその光親和性標識への応用が可能である。平成15年度は、高脂血症薬として広く臨床応用されているstatinsが骨格筋のCa^<2+>放出を強く促進することを見いだした。すなわち、その副作用である横紋筋融解症発症には、Ca^<2+>放出機構の関与の可能性が挙げられる。そこで、Cerivastatin(Cer)をリード化合物として、光親和性標識可能な誘導体を作成し、Ca^<2+>放出調節機構の解明とともに横紋筋融解症発症メカニズムの解明への分子プローブを探索することを計画した。実際に作成された誘導体GIF-469はCerの高脂血症薬としての作用点であるHMG-CoA reductaseをCerと同様に抑制するとともに光親和性標識可能な誘導体であった。
|