分泌小胞と細胞膜とお融合反応の調節機構と分泌小胞の供給過程の調節機構を解明する事を目的とし、我々の従来の研究成果と特徴を生かし、主に以下の様な成果を得た。 PKCによる分泌調節機構:PKCによる開口分泌調節機構につき微小炭素線維電極を用いたアンペロメトリー法で検討した。高カリウム(60mM5分間)刺激による開口分泌に対する、TPAの効果を検討した。TPA処理により高カリウム刺激後2〜5分の開口頻度の著明な増加が認められ、この効果は、4α-PDDでは見られず、PKCの阻害剤BISによって抑制された。これらの結果はPKCの活性化は放出可能なプールへの分泌顆粒の供給のステップを促進している事を示唆している。 過剰発現系での検討:PKCαを過剰発現した細胞では、高カリウム刺激後2〜5分の開口頻度の著明な増加が認められ、PKCβを過剰発現した細胞では、刺激後0〜1分の開口頻度の増加傾向が認められた。これらの結果は開口分泌の異なったステップが異なったPKCアイソマーにより調節されている可能性を示唆しており興味深い結果である。更に開口キネティクスの解析により、PKCαを過剰発現した細胞では、有意な開口速度の低下が認められた。この結果は、PKCが開口頻度ばかりではなく、開口速度も制御している事を示唆している。 ミオシンによる分泌調節機構:ミオシン切断酵素のミオシナーゼやミオシンVの抗血清の細胞内微量注入により、高カリウム刺激による開口頻度が抑制された。これらの結果は細胞骨格系蛋白質(特にミオシンV)が開口分泌を制御している可能性を示唆している。 イノシトール多リン酸による分泌調節機構:InsP6およびInsP7の細胞内微量注入により、高カリウム刺激による開口頻度が抑制された。これらの結果はInsP6・InsP7の小分子が開口分泌を制御していることを示唆していることがわかった。
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