研究概要 |
細胞内蛋白質のリン酸化レベルは、リン酸化反応を触媒するプロテインキナーゼと脱リン酸化反応を触媒するプロテインホスファターゼの両者で調節されている。本研究では、開口分泌におけるプロテインキナーゼ(チロシンキナーゼ、MAPキナーゼ)およびプロテインホスファターゼ(カルシニューリン)の役割を明らかにする目的で、ウシ副腎髄質培養細胞からのカテコールアミン(CA)分泌に対するそれぞれの阻害薬の作用を検討した。 1 プロテインホスファターゼ阻害薬(FK506、シクロスポリンA)の作用 1)非透過性細胞において、FK506はACh、DMPP、K^+脱分極によるCA分泌を濃度依存的に抑制した。 2)透過性細胞において、FK506はCa^<2+>およびカフェインによって引き起こされるCA分泌を抑制した。 3)シクロスポリンAは非透過性細胞においてACh、DMPPよるカテコールアミン分泌を軽度に抑制したが、K^+脱分極によるCA分泌および透過性細胞のCa^<2+>によるCA分泌を増強した。 以上の結果から、FK506が副腎髄質細胞においてCA分泌を抑制することが明らかになった。また、FK506とシクロスポリンAでは作用が異なることから、それらの作用にカルシニューリンは関与しないことが推察された。 2 チロシンキナーゼ阻害薬(genistein, herbimycin)、MAPキナーゼ阻害薬(PD098059,U0126)の作用 1)非透過性細胞において、チロシンキナーゼ阻害薬およびMAPキナーゼ阻害薬はACh、DMPPよるCA分泌を抑制したが、K^+脱分極によるCA分泌には影響を及ぼさなかった。 2)透過性細胞において、いずれの阻害薬もCa^<2+>によるCA分泌には影響を及ぼさなかった。 以上の結果から、ニコチン受容体を介するCA分泌にはチロシンキナーゼおよびMAPキナーゼの活性化が関与することが推察された。
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