アディポサイトカイン関連遺伝子発現とインスリン抵抗性

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14570090
• 研究機関: 星薬科大学
• 研究代表者: 鎌田 勝雄 星薬科大学, 医薬品化学研究所, 教授 (40121496)
• 研究分担者: 小林 恒雄 星薬科大学, 医薬品化学研究所, 助手 (90339523) ; 末永 浩 星薬科大学, 医薬品化学研究所, 助手 (70277698)
• キーワード: 糖尿病 / インスリン抵抗性 / アディポサイトカイン / インスリン / エンドセリン-1 / 活性酸素

研究概要

本研究計画の平成14年度における実績を以下、箇条書きする。
1)インスリンを糖尿病ラットに慢性投与すると、eNOSが過剰に発現し、これがインスリンによる血管障害改善作用の一部であることが明らかにされた。糖尿病時にはIGF-1受容体が高発現していたが、インスリンを慢性投与すると、更に発現が増加し、この増加はVEGFの発現を促進していることが明かとなった。以上の実験成績より、糖尿病ラットにインスリンを慢性投与すると、IGF-1受容体の発現増加→VEGFの発現増加→eNOSの発現増加となる。
2)糖尿病時には血中エンドセリン-1(ET-1)が著明に増加している。本研究では、ET-1の拮抗薬を糖尿病ラットに慢性投与して糖尿病性血管障害に対する効果を検討した。ET-1の拮抗薬であるJ-104132を慢性投与すると、内皮細胞の機能が著明に改善され、同時に糖尿病時に増加していた活性酸素が著明に減少した。この原因を調べたところ、NAD(P)Hoxidaseの発現がET-1の拮抗薬であるJ-104132によって著明に抑制されることが明かとなった。
3)酸化LDLから遊離され、動脈硬化の原因物質の一つと考えられているlysophosphatidylcholine(LPC)は血管平滑筋の収縮能を著明に増加するが、この原因として、チロシンキナーゼの活性を増加することが明かとなった。
4)糖尿病時には過酸化水素の発生も増加しているが、過酸化水素は一酸化窒素の発生を増加させる作用と収縮性のプロスタグランジン類を発生し、ノルアドレナリンの作用を修飾することが明かとなった。

研究成果

• [文献書誌] Kobayashi, T., Kamata, K.: "IGF-1 receptor or VEGE mRNA expression by chronic high dose insulin-treatment in aorta from control or established diabetic rats"Am. J. Physiol. Heart Circ. Physiol.. 283. H1761-H1768 (2002)
• [文献書誌] Suenaga, H., Kamata, K.: "Lysophosphatidylcholine potentiates vascular contractile responses via tyrosine kinase in rat aorta"Br. J. Pharmacol.. 135. 789-799 (2002)
• [文献書誌] Kanie, K., Kamata, K.: "Effects of chronic administration of the novel endothelin antagonist J-104132 on endothelial dysfunction streptozotocin-induced diabetic rat"Br. J. Pharmacol.. 135. 1395-1942 (2002)
• [文献書誌] Kobayashi, T., Kamata, K.: "Regulation of hydrogen peroxide on noradrenaline-induced contractile response in aorta from streptozotocin-induced diabetic rats"Eur. J. Pharmacol.. 441. 83-89 (2002)
• [文献書誌] Hayakawa, K., Kimura, M., Kamata, K.: "Mechanisms underlying GABA-induced antihypertensive effect in spontaneously hypertensive rats"Eur. J. Pharmacol.. 438. 107-113 (2002)
• [文献書誌] Makino, A., Kamata, K.: "Effects of chronic administration of L-arginine on vasoactive responses induced by endothelin-1 and its plasma level in streptozotocin-induced diabetic rats"J. Smooth Muscle Res.. 38. 101-115 (2002)