抗肥満因子であるレプチンの摂食抑制作用がセロトニンと関連すること、さらに、セロトニンの前駆体である5-hydroxytryptophan(5-HTP)がインスリンを介してレプチン分泌を増加させることが前年度までの研究結果より明らかになった。したがって、レプチンとセロトニンは相互関連を有し摂食を調節することが考えられた。一酸化窒素(NO)はホルモン分泌に関与することが明らかになっているが、レプチン分泌との関連は不明である。そこで、5-HTPのレプチン分泌上昇作用とNOとの関連について検討した。NO合成酵素(NOS)阻害薬であるN^G-nitro-L-arginine methylester(L-NAME)を用いて検討を行った結果、5-HTPによるレプチン分泌促進作用は抑制された。したがって、5-HTPによるレプチン分泌はNOを介して発現することが明らかになった。L-NAMEは非選択的NOS阻害薬であることが知られている。NOSには、eNOS、iNOS、nNOSの3つのタイプが存在する。そこで、5-HTPによるレプチン分泌促進作用に対するiNOS、nNOS阻害薬の作用を検討したところ、両阻害薬は5-HTPの作用に影響しなかった。したがって、5-HTPによりeNOSが活性化され、上昇したNOが5-HTPのレプチン分泌促進作用に関連すると考えられた。5-HTPによるレプチン分泌促進作用にインスリンが関与することを前年度の研究で明らかにしたので、5-HTPのインスリン分泌促進作用に対するNOS阻害薬の作用について検討した。その結果、5-HTPのインスリン分泌促進作用もL-NAMEにより抑制された。このことから、5-Hrpによるインスリン分泌促進作用にもNOが関連することが示唆された。以上の知見より、抗肥満因子であるレプチンの分泌にNOが関連することを初めて明らかにした。
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