近年、肥満遺伝子産物として脂肪細胞から遊離されるレプチンが、摂食の抑制やエネルギー消費の増加などを引き起こすことが明らかにされ、レプチンは新たな食欲抑制因子また抗肥満因子として脚光を浴びている。しかし、レプチンの摂食抑制作用の詳細なメカニズムは不明である。セロトニンは摂食調節に役割を担う神経伝達物質としてよく知られており、摂食抑制作用を引き起こすことが知られている。また最近、脳内における一酸化窒素(NO)が摂食の亢進に関与することが報告されている。本研究では、レプチンの摂食抑制作用の作用機構を解明するため、セロトニンおよびNOの関与について検討を行った。レプチンの摂食抑制作用とセロトニンとの関連を明らかにするため、セロトニン枯渇薬および各種セロトニン受容体拮抗薬を用いて検討した結果、レプチンの摂食抑制作用には、セロトニン2B/2C受容体が関与することを明らかにした。また、レプチンが摂食抑制作用を示す用量を投与したマウス脳内のNOx(一酸化窒素代謝物)濃度の変動について検討を行ったところ、レプチンは脳内NOx濃度に影響を与えることなく、摂食抑制作用を引き起こすことを明らかにした。セロトニンとレプチンの摂食抑制作用との関連を明らかにする一環として、セロトニン作動性神経の活性化が血中レプチン濃度に影響するか否かについて検討した結果、セロトニンの前駆体である5-hydroxytryptophan(5-HTP)がマウス血清レプチン濃度を上昇させることを見いだした。さらに、5-HTPの血中レプチン増加作用にはインスリンおよび一酸化窒素が関連を有することを明らかにした。以上の知見より、抗肥満因子であるレプチンの分泌にセロトニンやNOが関連することを初めて明らかにし、レプチンの摂食抑制作用にセロトニンおよびNOが役割を有することが示唆された。
|