研究概要 |
【目的】 NO合成酵素(NOS)には、内皮型(eNOS)・誘導型(iNOS)・神経型(nNOS)の3種類のアイソフォームが存在する。eNOSやiNOSが動脈硬化症の機序に関与することは広く知られているが、nNOSの役割は不明である。最近我々は、nNOSも抗動脈硬化因子として機能することを見出した(FASEB J.10.1096/fj.02-0155fie,2002)。本研究では、血管壁nNOSの発現調節機構を解明することを目的とする。 【方法と結果】 1.血管壁nNOSアイソフオームの同定 nNOSにはαとμの少なくとも2種類のアイソフォームが存在する。これらのアイソフォームを特異的に認識するprimerを作製し、ラット大動脈平滑筋培養細胞においてRT-PCRを行ったところ、両アイソフォームの発現が認められた。 2.血管壁nNOS発現調節機構の検討 ラット大動脈平滑筋培養細胞をAngiotensin II(10^<-7>M)で24時間刺激すると、RT-PCR及びWertern blot解析によるnNOSα mRNA及び蛋白レベルが有意に増加した。IL1-β(10μg/ml)刺激も同様に、nNOSα mRNA及び蛋白レベルを有意に増加させた。一方、両刺激はnNOSμの発現は逆に有意に低下させた。 【総括】 平成14年度の成果として、(1)ラット大動脈平滑筋培養細胞に発現するnNOSアイソフォームを同定し、さらに(2)炎症性刺激(Angiotensin II/IL1-β)が同細胞のnNOS発現を有意に増加させることを明らかにすることが出来た(結果の一部を2003年3月の日本循環器学会で発表予定)。平成15年度は、血管壁nNOS発現の分子機構をさらに解析し、加えて血管病変におけるNOSアイソフォームの相互連関を明らかにして、抗動脈硬化機構としての血管壁NOSシステムの意義の全容の解明を目指す予定である。
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