研究概要 |
【目的】我々は、神経型NO合成酵素(nNOS)が新規抗動脈硬化因子として機能することを見出した(FASEB J.2002)。本研究では、血管壁細胞におけるnNOSの発現調節機構を解明することを目的とした。 【方法】ラット大動脈平滑筋培養細胞を実験に使用した。nNOS mRNAの発現はRT-PCRで、nNOS蛋白の発現はWestern blotで評価した。 【結果】血小板由来増殖因子(PDGF-BB)は、ラット大動脈平滑筋培養細胞のnNOS mRNA及び蛋白レベルを時間依存性(0.5〜5日)及び濃度依存性(10〜200ng/ml)に増加させた。この増加は、Mitogen-activated protein (MAP) kinase cascade阻害薬(PD98059/U0126)並びにMAP kinase dominant-negative変異体の遺伝子導入によって有意に抑制された。Angiotensin II (10^<-7>M,1〜3日)及びInterleukin-1beta (10ng/ml,1〜3日)も、ラット大動脈平滑筋培養細胞のnNOS mRNA及び蛋白レベルを有意に増加させた。この増加は、NF-kB阻害薬(PDTC/TPCK)によって有意に抑制された。 【総括】平成15年度の成果として、PDGFがMAP kinaseを介して血管平滑筋細胞のnNOS発現を増加させること、及びAngiotensin II/Interleukin-1betaもNF-kBを介して同細胞のnNOS発現を増加させることを明らかにすることが出来た。神経系では恒常的に発現するnNOSが、血管系では炎症性/増殖性刺激によって発現調節を受けていることが示唆された。
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