遺伝子改変マウスおよび特異的阻害薬を用い、食塩感受性高血圧の発症における1型Na^+/Ca^<2+>交換輸送体(NCX1)の関与について検討した。方法:NCX1ヘテロノックアウト(KO)マウスおよび野生型(WT)マウスを用いて、定法に従ってdeoxycorticosterone acetate(DOCA)食塩誘発性高血圧モデルを作製し、両者の高血圧発症の程度を比較した。また、種々高血圧ラットに選択的NCX1阻害薬SEA0400(SEA)を急性あるいは慢性的に投与し、血圧および臓器障害に及ぼす影響を調べた。結果:KOマウスとWTマウスで正常時の血圧に有意差は無かった。WTマウスは片腎摘出後、DOCA食塩を4週間負荷することにより有意な血圧上昇を示したが、KOマウスは同処置により顕著な血圧変化を示さなかった。SEA(経口投与、1〜10mg/kg)はDOCA食塩高血圧ラットおよび高食塩負荷Dah1食塩感受性ラットの血圧を用量依存性に低下させた。一方、SEAは正常血圧ラット(WKY)、高血圧自然発症フット(SHR)、低食塩負荷Dah1食塩感受性ラット、Dah1食塩非感受性ラット、2腎1クリップ型腎性高血圧ラットの血圧には有意な影響を与えなかった。さらに、DOCA食塩負荷1週後より4週目までラットにSEAを3週間連続投与すると、DOCA食塩で誘発される血圧上昇および臓器障害(心肥大、血管肥厚、腎組織障害、腎機能低下)は著明に抑制された。考察:以上の結果は、食塩感受性高血圧の発症にNCX1が関与することを示唆している。NCX1阻害薬は食塩感受性高血圧の特異的な治療薬・診断薬となる可能性が考えられる。
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