遺伝子改変マウスおよび特異的阻害薬を用い、食塩感受性高血圧の発症における1型Na^<+>/Ca^<2+>交換輸送体(NCX1)の関与について検討を行った。特異的なNCX1阻害薬SEA0400の種々高血圧モデル動物に対する作用を調べたところ、この阻害薬は食塩感受性高血圧動物に対して特異的に降圧作用を示し、他の高血圧動物および正常血圧動物に対しては影響を及ぼさないことがわかった。SEA0400を食塩感受性高血圧ラットの大腿動脈に持続注入すると、大腿動脈血流量が著明に増加した。また、SEA0400はウアバイン誘発収縮および細胞内Ca^<2+>濃度上昇を抑制する作用を有した。NCX1ノックアウトマウスのヘテロ接合体を用いて高血圧モデルを作製したところ、deoxycorticosterone acetate(DOCA)食塩誘発高血圧が発症しにくいことがわかった。一方、血管平滑筋特異的NCX1トランスジェニックマウスを作製したところ、血圧に対する食塩感受性が亢進していることがわかった。心筋特異的NCX1トランスジェニックマウスでは、そのような食塩感受性の亢進は認められなかった。SEA0400は、血管平滑筋特異的NCX1トランスジェニックマウスの食塩誘発高血圧を顕著に降圧させた。一方、この阻害薬は、SEA0400非感受性のNCX1変異体トランスジェニックマウスの食塩誘発高血圧に対しては影響を及ぼさなかった。これらの結果は、食塩感受性高血圧の発症・進展に血管平滑筋細胞に発現するNCX1が密接に関わっていることを示唆している。また、NCX1阻害薬は食塩感受性高血圧の特異的な治療薬・診断薬となる可能性が考えられる。
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