研究概要 |
分化抑制因子Idは、種々の細胞分化過程で重要な役割を果たすbasic helix-loop-helix(bHLH)型転写因子の機能阻害因子の一つであり、細胞分化を抑制して未分化状態を維持する活性を持つ。bHLH型転写因子(E2A等)の機能抑制因子のひとつ、Id2の欠損マウス(パイエル板・末梢リンパ節欠損、CD8T細胞数低下、NK細胞数低下などの特徴を持つ)の血中IgEが著明に上昇しており、CD4T細胞の分化が、Th2環境に傾いたマウスであることを見出した。このことから、Id蛋白を介するbHLH転写因子の制御の乱れがIgE産生、Th2への分化亢進の要因の一つである可能性が示唆された。これは、1.生体内でのヘルパーT細胞分化がTh2にシフトしていること 2.B細胞のIgEクラススイッチが亢進していることに起因することを明らかにした。Th2型サイトカインの産生はCD8+樹状細胞の欠陥がひとつの原因である可能性が示唆された。また、CD8T細胞の欠陥が非常に重要であることを明らかにした。この欠陥はIL-12,IFN-γ以外のCD8T細胞のもつ機能であり、その実体は現在解析中であるB細胞のIgEクラススイッチ亢進は、Id2の欠失によるE2A活性の亢進により、IgEへのスイッチが直接的に増強されていることが明らかになった。さらに実際生体内では、Id2がTGF-β1により誘導され、TGF-β1によるIgEクラススイッチ抑制のエフェクター分子として働いていることも明らかにした。
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