研究概要 |
1.分化抑制因子Idは、種々の細胞分化過程で重要な役割を果たすbasic helix-loop-helix(bHLH)型転写因子の機能阻害因子であり、細胞分化を抑制して未分化状態を維持する活性を持つ。この機能抑制因子のひとつ、Id2の欠損マウスの血中IgEが著明に上昇しており、CD4T細胞の分化が、Th2に傾いていることを見出した。これは、1.生体内でのヘルパーT細胞分化がTh2にシフトしていること2.B細胞のIgEクラススイッチが亢進していることに起因することを明らかにした。Th2型サイトカインの産生はCD8+樹状細胞の欠陥がひとつの原因である可能性が示唆された。また、IgEのクラススイツチにはE2Aという転写因子が重要であり、E2Aの負の制御因子であるId2が実際にIgEのクラススイッチを負に制御していることが明らかになった。さらに,TGF-β1がId2を誘導する活性を持ち、過剰なIgE産生の負の制御因子として働いていることも明らかにした。2.Idの過剰発現によりクラススイッチが抑制されることから、IdはAID発現の負の制御因子として働いているのではないかという作業仮説を検証した。Id2過剰発現B細胞ではAID発現が1/5に減少していた。さらに、Id2欠損マウスのB細胞では通常の五倍の発現していることを見い出した。さらなる解析の結果、AID転写はPax5とIdのバランスで制御されていることが明らかになった。3.クラススイッチ組み換えは領域特異的(S領域)DNA組み換えであり、この結果、抗体遺伝子に様々な異なる生物学的機能が付与される。スイッチするべきクラスの決定は、S領域への組み換え酵素のaccessibility制御によることが想定されているが、その分子的実体は明らかではない。Accessibilityはヒストンアセチル化、もしくは転写(Germline転写)によって制御されていることが想定されているが、クラススイッチにはGermline転写が必須であることが明らかになった。
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