研究概要 |
ヒト糖輸送体(Glut)の基質認識部位の解析を目標にして、遺伝子操作の容易な酵母Saccharomyces cerevisiaeのGlutと同じMajor facilitator superfamily(MFS)に属する2つの糖輸送体を用いてキメラを作成することにより基質認識部位の解析を行った。酵母の高親和性糖輸送体Hxt2と低親和性糖輸送体Hxt1は、各々12個の膜貫通領域(TM)を持ち、両者のTMおよびTM間ループのアミノ酸は70%同一である。Hxt2の高親和性糖輸送に必要なTMを明らかにするため、Hxt2のすべてのTMを、対応するHxt1のTMでランダムに置換した2^<12>=4,096個のキメラを作成した。20,000個以上のクローンから、高親和性糖輸送を行うクローンを寒天培地の糖濃度を下げて選択した。得られた39個のクローンは、2個の例外を除いて、Hxt2のTMl,5,7,8を持っていた。これらTMが必要かつ十分であることを確かめるため、4種のTMのすべての組み合わせをもった16個のキメラを作成した。16個のキメラの中で、ただひとつ、TM1,5,7,8のすべてを持つキメラがHxt2とほぼ同じ性質(Km、Vmax、基質特異性)を持っていた。従ってTM1,5,7,8が基質認識の重要な部分を担っていて、輸送体の膜貫通ポアを構成していることが示唆される。 最近、MFSに属する細菌のオキザレート輸送体OxlTの低解像度結晶解析の結果が報告された。上記のTM1,5,7,8はいずれも基質通過のポアを構成していることが明らかになった。 Hxt1とHxt2間ではTM1,5,7,8で20個のアミノ酸が異なる。今後、どのアミノ酸が高親和性糖輸送に必須であるのか明らかにし、基質認識部位を特定して、同じファミリーのヒト糖輸送体の機能部位の解析を行う。
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