研究概要 |
ヒト糖輸送体(Glut)の基質認識部位の解析を目標にして、遺伝子操作の容易な酵母Saccharomyces cerevisiaeの、Glutと同じMajor facilitator superfamilyに属する糖輸送体を用いて基質認識部位の解析を行った。酵母の高親和性糖輸送体Hxt2と低親和性糖輸送体Hxt1は、各々12個の膜貫通領域(TM)を持ち、両者のTMのアミノ酸は70%同一である。Hxt2の高親和性糖輸送に必要なTMを明らかにするため、Hxt2のすべてのTMを、対応するHxt1のTMでランダムに置換したキメラを作成し、糖濃度を低くした寒天培地上で高親和性糖輸送を行うクローンを選択した。Hxt2のTM1,5,7,8が高親和性糖輸送に必須である結果を得た。最近、MFSに属する細菌のラクトース輸送体LacYとグリセロール3リン酸輸送体GlpTの結晶解析の結果が報告された。TM1,5,7,8はいずれも基質通過のポアを構成していることが明らかになった。 TM1,5,7,8中、Hxt1、Hxt2間で異なる20個のアミノ酸において、Hxt2のアミノ酸を、対応するHxt1のアミノ酸とランダムに置換したすべての組み合わせの変異体を作成し、その糖輸送活性の解析からTM5においてはLeu-201が高親和性糖輸送に必須であり、Cys-195とPhe-198が補助的役割を担っていることが明らかになった。これら3個のアミノ酸は膜貫通ヘリックスの同じ側面にあり、糖輸送のpathwayを形成していることが示唆される。さらに解析を進め、Hxt2の10個のアミノ酸があれば高親和性糖輸送を行うことが明らかになってきた(投稿中)。 ヒト糖輸送体Glut1においてもLeu-201に対応するアミノ酸がやはりLeu-162であり、このアミノ酸が糖輸送の親和性に関与していることを強く示唆する。
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