アラキドン酸カスケードと呼ばれる代謝系では、種々の脂質メデイエーターがアラキドン酸を前駆物質として生合成されその始まりはシクロオキシゲナーゼやリポキシゲナーゼのような酸素添加酵素の反応である。このような酵素の触媒活性と遺伝子発現の阻害剤を探索する本研究計画の一環として、最終年度は次の2点について研究を進めた。 1)12-リポキシゲナーゼ阻害剤の探索:この酵素の生理的役割は未だ確定していない。その抗酸化作用故に健康食品として注目される茶葉のカテキン類を検討して来たが、(-)-ガロカテキンガレートが、ヒト血小板の12-リポキシゲナーゼを特異的に阻害することを見出した。そのIC_<50>値はおよそ1μMであった。他のリポキシゲナーゼやシクロオキシゲナーゼのアイソザイムは10μMでは顕著な阻害が認められなかった。 2)プロスタグランジンE_2の酵素免疫測定法の開発:シクロオキシゲナーゼ産物で最も多彩な生理活性をもつプロスタグランジンE_2の動態を追うことによって、シクロオキシゲナーゼの動態を調べることが出来る。不安定なプロスタグランジンE_2の代わりに、安定な誘導体の9-デオキシ-9β-クロロプロスタグランジンF_2を使うことによって、標識酵素を安定化できた。さらに、標識酵素として検討した種々の酵素のうち、アセチルコリンエステラーゼを用いることによって、50pg/50μl試料というIC_<50>値で、感度よくプロスタグランジシE_2を測定できるようになった。
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