マウスE6DG1 cDNA配列よりマウスゲノムを検索した結果、更に上流より転写されるcDNAの存在が明らかになり、この上流より転写されるマウスcDNAのヒトホモローグcDNAを同定し、cDNAクローニングを行い、このcDNAを用いて機能解析を行った。 この上流部分を含んだcDNAがコードするタンパク質は、6OSリボゾームタンパク質L7に高いホモロジーを示すことから、リボゾーム関連タンパク質であると考えられた。イーストのリボゾーム関連タンパク質のRlp7pのRNA結合ドメインと高いホモロジーを有する部分がE6DG1に存在することから、Rlp7pのホモローグであることが推測されていたが、イーストRlp7pと同様にE6DG1がリボゾームのプロセッシングの律速段階を調節することが明らかとなった。また、HPV E6によるE6DG1の発現抑制が、リボゾームタンパク質合成の低下を招き、結果的に細胞周期の異常を誘発し、染色体不安定性に寄与する可能性が示唆された。 従来より、HPV E6には染色体不安定性への関与が知られていたが、E6DG1がこの機能に関与していることが本研究から強く示唆された。 一般的に、ヒト腫瘍ウイルスの細胞の増殖性への関与は明らかになっているが、発癌への直接的な関与はp53機能阻害によるアポトーシス抑制のみでは十分に説明出来ていなかった。本研究で明らかとなったりボゾームタンパク質合成経路を介する染色体不安定性への関与は、p53非発癌の新たな経路を示唆するものである。
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