E6DG1の足場依存性への関与の機構を解析するために、E6DG1の発現調節系を構築した。その結果、E6DG1の強発現は一般的に足場依存性を減少させることが明らかになった。一方、E6DG1の発現抑制は、癌細胞種依存性に足場依存性を増強させる場合と影響の無い場合のあることが判った。E6DG1の発現抑制が影響の無い細胞株においては、E6DG1が関与する経路に障害のあることが想定された。また、E6DG1の強発現および抑制はアポトーシスを誘導することも判明した。 更に、E6DG1蛋白質の構造解析を行った結果、E6DG1は60Sリボゾームタンパク質L7に高いホモロジーを示すリボゾーム関連タンパク質であり、イーストのリボゾーム関連タンパク質のRlp7pのRNA結合ドメインと高いホモロジーを有するドメインを有していた。E6DG1のリボゾームプロセッシングへの関与を調べた結果、イーストRlp7pと同様にE6DG1がリボゾームのプロセッシングの律速段階を調節することが明らかとなった。 以上のことから、E6DG1はリボゾームプロセッシングを調節するタンパク質であり、細胞周期およびアポトーシスに間接的または直接的に関与し、結果的に足場依存性に影響を及ぼしていることが示唆された。また、HPV E6によるE6DG1の発現抑制が、リボゾームタンパク質合成の低下を招き、結果的に細胞周期の異常を誘発し、染色体不安定性に寄与する可能性が示唆された。 従来より、HPVE6には染色体不安定性への関与が知られていたが、E6DG1がこの機能に関与していることが本研究から強く示唆された。本研究で明らかとなったリボゾームタンパク質合成経路を介する染色体不安定性への関与は、発癌の新たな経路を示唆するものである。
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