研究概要 |
まず、線維芽肉腫細胞であるHT1080細胞を用いてカルポニンh1の作用を検討したところ、ヒトカルポニンh1遺伝子の導入により足場非依存性増殖および造腫瘍性の抑制、形態のflat reversion,アクチンの安定化、運動性の低下、ファイブロネクチンへの接着の増強等が認められた。 次に、これらの現象に対するカルポニンh1の責任領域を特定し、更にそれに続くシグナル伝達系を解明することを目的として、truncatesの作成を行った。カルポニンh1はN末にcalponin homology domain (CHD),真中にactin binding site (ABS), C末にcalponin repeats (CNR)を持つ。CHDはvav-3 oncogeneの、stress fiber形成等の活性を抑制する領域との相同性を示し、ABSはアクチン線維安定化へのカルポニンh1の関与部位として、インテグリン、ファイブロネクチン等を含む接着系シグナル伝達に関わることが予想され、CNRはRho kinaseの基質であることから、カルポニンがRhoのシグナル伝達系に積極的に関わっていることが推測されるため、それぞれのsitesを組み合わせたtruncatesを作った。それらをリン酸カルシウム法でHT1080に導入して、全長CNh1遺伝子あるいはvectorのみ導入した細胞間で形態の比較検討を行ったところ、CNh1の導入によって誘導されたflat morphologyがCHD, CHD及びABSを欠損させたものでは見られなかったことから、HT1080細胞でのflat reversionにはCHh1のN末に位置するCHDが関与する事が示唆された.更に詳細な検討を行っている.
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