20Sプロテアソームと変性蛋白質との相互作用についての解析 26Sプロテアソームはユビキチン化された蛋白質を選択的に分解する酵素として知られているが、最近必ずしも制御ユニットによる調節や基質のユビキチン化を必要としない、20Sプロテアソームによって基質が直接分解されるメカニズムが注目されている。20Sプロテアソームはその構造上、立体構造を有する基質を直接分解する事は困難であり、基質はアンフォールドされその構造が解されることが前提となる。この際、アンフォールドされた(変性体)蛋白質同士の相互作用を管理する分子シャペロン機能の必要性が想定される。我々はこれまで、プロテアーゼである20Sプロテアソームを、ATP/ADP交換反応を触媒する分子シャペロンとして提唱してきたが、今回我々は、20Sプロテアソームが変性蛋白質間でおこる凝集塊形成を効果的に抑えるような分子シャペロンとして機能していることを明らかにした。これは、20Sプロテアソームによる基質分解を説明する上で極めて合理的なシステムであり、現在詳細な解析を行っている。 Hsp70のヌクレオチド交換反応の作用機序の解析 我々はこれまで、Hsp70が生理的濃度ATP/ADP存在下で、そのATPase作用のみならずATP/ADP交換まで触媒する作用を有する事を報告してきた。今回、Hsp70蛋白の各種変異体を用いた解析により、そのATPaseドメイン内に、従来から言われてきたATP結合部位とは異なった新たなヌクレオチド結合部位(ADPに結合)が存在している事を明らかにした。実際、ATP/ADP交換反応はこの2つの異なったヌクレオチド結合部位で調節されていた。興味深いことに、Hsp70のシャペロン活性である基質の巻き戻し反応は、ADPのHsp70結合により著しく抑制されたことから、Hsp70が有するATP/ADP交換反応の役割を解析している。
|